基本は単行本のレビューしかしないようにしているんですが、本誌185話「再会」を夜中に読んで、しゃべらずにはいられませんでした。
もう今週号のタイトルからしてネタバレのようなものですが、再会できてよかった……!
本誌のネタバレしかありませんので、単行本派の方はお気を付けください。
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再会した杉元と白石
先週号の最後でやっと再会を果たした杉元と白石。「杉元佐一」「白石由竹」とフルネームで呼ぶ当たり、この二人らしいし、存在を確かめ合う感じがよかったですね。
全読者が「おめでとう!おめでとう!」と拍手を送った翌週、明けてすぐに
「…で アシリパさんは?」
となるところは杉元ですねえ(笑)
白石も真っ先に尾形が「杉元の死は近くで確認した」と発言したことを杉元に報告し、杉元は自分とウイルクを撃ったのは尾形だと告げます。
ここまでのスピードはものすごく速い。
「アシリパさんを取り戻すぞ」となって場面は切り替わり、アシリパと尾形の会話へ……
尾形、対人スキル大丈夫?
アシリパは、ソフィアがウイルクの過去を語って聞かせたことで刺青の暗号のヒントにたどり着いていました。
それをすかさず察知したのが尾形。
網走監獄を出て以来、アシリパ一行のシーンではとにかく目についたのが、キロランケと尾形の目線です。
キロランケはウイルクと同胞だったため、樺太を北上する間はことあるごとにウイルクの過去についてアシリパに語っていましたよね。アシリパは自分の知らない父の話を知ることを素直に喜んでいましたが、キロランケと尾形はいちいちアシリパの表情や反応をチェックしているという。顔に影がさしてめちゃくちゃ怖いんですよ……。
そしてついにアシリパは父が残したヒントにたどり着いたわけですが、まあ尾形は目ざとい。
先週号から白石は流氷が割れて少し離脱。その間、アシリパは燃やす流木を探しに出ます。そこについていったのが尾形。
ゆっくり聞き出せばいいのに、尾形ときたら正面から「暗号の手がかりわかったんだろ?教えろ」と来るわけですよ……まじかお前。
そこでなんて言って頼むのかと思ったら、
「アシリパ 俺に教えてくれないのか?」
とこうです。「俺に教えてくれるか?」ではなく「教えてくれないのか?」という。
これ、相手を責めるアプローチのしかたですよね。「ここまで命を張って戦ったぶんの報酬が欲しいだけだ」「杉元と同じように」と続きます。
杉元と同じように。
アシリパが最も信頼しているであろう杉元と自分を同列に置くことで、無害さをアピールしたのか?
自分は国を作れるほどの大金に興味はないし、教えてくれたらアシリパもこの殺し合いから一抜けできるよ、と。
この尾形必死の交渉(?)で一番笑ったのは、コタンに帰ってばあちゃんに元気な顔を見せてやれと言ったあとの「そうだろアシリパ……!!」です。
尾形って「!」なんて使うような人間だったっけ?(笑)
尾形なりにアシリパのことを思っているようなふうを装って、頑張ったね。いやほんとに、あの尾形が本当によくやったと思いますよ。
月島軍曹のやさしさ
↑の15巻のレビューでも触れていますが、月島軍曹ってなんて優しいの?
15巻では自分と少々重なる部分がある岩息に対して熱量をもって叱咤激励していましたけど、今週号もちょっとそれに近い熱量がありましたよ。
ちょっと前、遭難しかけた先遣隊がお世話になった燈台の夫婦の娘を偶然見つけたんです。スヴェトラーナという。
月島軍曹にとってはひとり先に走っていった杉元を追わなきゃならないし、「こんな娘に構ってる場合じゃない…!!」という軍曹の発言からも瞬間的に迷ってるのがわかります。
でも声をかけちゃった~!
軍曹らしいよ。吹雪の中うずくまっていたスヴェトラーナは、「都会に行きたいんだ」とかなんとか抜かしていてがっかり。そういう理由で家出したんかい……。
月島軍曹もブチギレですよ。こんだけ感情を露わにしたのも15巻ぶりじゃないかな?
こんな時にお世話になった人が探してた娘を見つけたからってちゃんと声をかけるの、優しすぎるよ。ますます好きになる。
一方、行動を共にしていたゲンジロと鯉登少尉は監獄から脱走したと思しき男から襲われます。そこでゲンジロは二瓶の銃を奪われて、しばし闘争。
しゃがんで下から目を合わせる尾形
場面戻って、アシリパと尾形です。
ここでまた驚きなのが、尾形がしゃがんでアシリパを下からのぞき込んでいるところです!
そんな……!うそだろ尾形(笑)
「アイヌのことはキロランケやソフィアに任せたらいいから」
「お前が重荷を背負う必要はないから」
いかにも耳ざわりのいい言葉を並べてアシリパを離脱させようとする。
だから「教えてくれアシリパ」と。
でもリパさんがそんなことで騙される馬鹿じゃないのはわかってるじゃないですか。
アシリパさんはここまでずーっと黙って尾形の説得を聞いてたんですけど、やっと口を開きます。
「じゃあどうしてキロランケニシパから離れたところで聞き出そうとするんだ?」
賢すぎ……
この次のコマで尾形はだんまりですよ(笑)
そりゃそうですね。アシリパさんの言うことは至極真っ当です。
尾形なりに、網走監獄を出てからずっとアシリパのそばでちょっと優しいそぶりを見せてみたり、ほわほわトーンで「一緒に行くかアシリパ」とか言ってみたりしてたわけですが、アシリパさんには全く信用されていなかったという。
尾形はこのやり方で説得できると本当に思ってたのかな?アシリパさんにはずるいやり方で聞き出そうとしても無駄だから真正面から「教えてくれ」と言ったのはいいとしても、アシリパさんが教えてくれるほどの関係になれてると思ったのか。信頼されているつもりだったんでしょうか?その自信はどこから……?
銃声でつながる3場面
また場面は変わり、脱獄囚と闘争するゲンジロと鯉登少尉です。二瓶の村田銃は脱獄囚に渡っていて、脱獄囚が引き金を引きます。
その音が辺りに響いて……
当然尾形も耳にします。
つい何号か前もこの銃の音を尾形は遠くから聞いていて、「まさかな…」と思っていたわけですが、また同じ音が聞こえた。
尾形、アシリパ、キロランケ。全員が銃声を耳にし、尾形はすかさず双眼鏡で吹雪の中遠くを探します。目を皿のようにしちゃって。
ここでドーンと飛び込むのが杉元。
尾形は、うわーやっぱ生きてた!となって間、髪を入れずに「ジャキッ」ですよ。
撃つ気満々じゃん(笑)
最後のページのコメントのとこ、「撃った瞬間…お前を感じた。」ってなっていて、お前も感じてたのか~!そうか~!ってややテンション上がりましたね。
「次号、もういい撃とう撃とう」
ってなんだその適当な感じ。だから本誌はやめられません。
次号、尾形はどう出る?
流れからすると「杉元生きてんじゃん撃たなきゃ!」というところですが、状況からするとアシリパさんゆすることも考えられますね。教えてくれなきゃ杉元撃っちゃうよと。
ここまで一緒に行動してきて信用されなかったんだから、もう投げやりになってもいいころ合いじゃないかな。
それにしても、あれだけ人の心がないサイコパスと言われてきた尾形が、やさしさがあるふりをして、子どものためを思うふりをして説得した今週号。アシリパさんには歯牙にもかけられなかったわけです。どんどん哀れになってくるなあ尾形は。
尾形って最後は救われるんでしょうかね?
構成はダンケルクさながら
本誌1話分のページって17ページですけど、たったこれだけのページにあんなに情報を詰め込む?っていうほどあっちに行ったりまた戻ったり、場面転換が激しかった今週号。
3場面が次々切り替わっていき、最後は銃声ですべての場面の時間軸がピタッと重なるという構成、映画『ダンケルク』を彷彿とさせます。あれは陸・海・空の3場面で時間も長いですけど、こっちはおそらくたった数十分程度の時間が怒涛のように展開している。
野田せんせー、構成力すごすぎじゃないですか?山場の作り方がうますぎる……!
いつもすごいよすごすぎるよ野田カムイと思ってたけど、今回ほど高ぶったことはないです。
次号は年をまたがないと読めない。めちゃくちゃじれったい。尾形は杉元にぶっ飛ばされるのかな……。
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