ゴールデンカムイ27巻【感想・考察】有古親子

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27巻で気になったのはイポプテ(プは小文字)の父・シロマクル(ルは小文字)の扱い方が変わったところです。鶴見中尉、より嫌な人に……。

28巻以降の感想はちょっと遅くなりそうです。

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26巻の感想はこちら↓

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脅されるシロマクル

268話、エピソードが回想の形で差し込まれたり、構成からガラッと変わっていたり、結構大幅に変更があった回でした。

細かいところは省きますが、鶴見中尉の「力松くん」呼び(和名)、シロマクルを「お父様」と呼ぶ、「第七師団は家族同然、もちろん力松くんも」。からの、「私たちはそう思ってるけど、力松くんのほうにも家族同然の信頼はどうかなあ(意訳)」とか。ねっとり絡めとられる。

こんなふうに言われちゃ、シロマクルは息子を人質にとられて脅されているようなもの(というか実際そう)で、一抜けしたはずなのに確かめに行かざるを得なくなる。本誌を読んだ時の印象よりも、鶴見中尉に巧みに動かされている感が強くなっています。

「日本人として生きる若いアイヌのためにも」話してくれと言われ、ウイルクについて尋ねる時に「男の名前と人相は?お父様」とくる。その後にダメ押しの「帝政ロシアと戦っていたウイルクの過去」暴露という流れになっています。

家族同然云々とか、日本人として生きる若いアイヌとか、マジョリティがそれを言う厭らしさよ。

最近、アシリパさんの和名呼びで物議がありました。和名があることの背景も考えず、必要もなく無邪気に和名呼びするのは差別の再生産。それを鶴見中尉は、圧力をかけるために意図的に使ってるんですよね(力松くん×2)。何巻の加筆修正だったか忘れましたが、アシリパさんや土方さんのセリフで有古の名前が「力松」から「イポプテ」に修正されていました。ここからも鶴見中尉と土方さんのアイヌの捉え方の違いが見えてくると思います。

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菊田さんの罪悪感

本誌では、菊田さんはアイヌの亡骸を見て「有古になんて言ったらいいか」と思うのですが、単行本ではこの場面のアイヌがラッチからシロマクルに替わっています。菊田さんは鶴見中尉が一抜けしたシロマクルを脅してアイヌたちの居場所へ向かわせた流れを知っていて、そこにきて瀕死のシロマクルを発見したわけで、戦友に対する罪悪感もマシマシですよ。

そりゃ、菊田さんからイポプテへの感情がデカいわけだ。

イポプテの決意

このエピソードを見せられた後でイポプテがアシリパさんを見て気持ちを変え「力になりたい」というわけです。アイヌの未来を考えるアシリパさんを見て自分を恥じるイポプテ。でもイポプテが「アイヌとかめんどくさい」と思うようになったのは、「有古力松」として和人の社会で生きることを選んだ(選ばされた)ために、仕方ないことだったと思います。

アイヌの輪の中に生きる老人ならまだしも、同化政策真っただ中に生まれてこれから先も生きていかなければならないイポプテのような若者にとっては、「アイヌの未来」を背負う・守るだけのエネルギーを保ち続けるって大変ですから。そのエネルギーを根こそぎ奪っていくのが同化政策だし。

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