ゴールデンカムイ17巻、DVD同梱版を読みましたー!
DVDの内容はあまり触れません。内容は漫画のままですからね。ただ白石の白石は隠れてましたよ……映像ではやはりNGなのか(笑)
今回はなんといっても、表紙からわかるように尾形の巻です。本誌で既に読んだ内容ではあるのですが、やっぱりしんどいなあ。裏表紙に初登場の勇作さんも大活躍です。それにしても裏表紙の勇作どん、その立ち方はなんなのだ……?白樺?の木のあちら側はいかにも死者の世界のようで(下のトナカイの亡骸からも連想される)めちゃめちゃ不穏です。
16巻同様、17巻の前巻のおさらいはゲンズロに気合が入っています。アチャが丸い物体なのも同じ。今回もゲンジロの胸毛増し増しです。
16巻の内容はこちらをどうぞ↓
狙撃手VS狙撃手
16巻は国境を越えたところで終了でした。全員に死が迫るようなシーンからの17巻スタートです。本誌リアルタイム時は毎週生きた心地がしなかったあたりですね。
ロシア兵は三八式を持っている人間を狙撃しました。運悪くアンマーが尾形の三八を持っていたために頭をかすり、倒れこんでしまいます。尾形はそれを狙ってたんじゃないかと思うほど落ち着いてますよね。もちろんそんなはずはないのですが。
全ての出来事には理由がある
撃たれたアンマーを回収するため、ロシア兵に狙われているにも関わらずキロランケは隠れもせず堂々と歩いて助けに行きます。
結果撃たれることなく回収でき、キロランケはそれを「カムイレンカイネ(カムイのおかげ)」だと言います。
しかし尾形はすかさず
「違うな…俺のおかげだ」
と言い放つ。この物言いには「どんなもんだい」と同じものを感じますが、ここはちょっと注目したいところ。アンマーが助かったのは帽子のおかげであり、全ての出来事には理由があると言う尾形。だから俺たちが狙われるのにも理由があるのだ、と言います。
未来のアイヌを自称するアシリパさんでもカムイの存在は重んじます。キロランケもそれは同じ。しかし尾形はそんなものは信じません。論理的といえば聞こえはいいですが、尾形って自分にないもの、自分に理解できないものは信じないんじゃないでしょうか。これはこの後にも関連するテーマです。
良い狙撃手の条件
162話「狙撃手の条件」は、なぜかロシアの狙撃手・ヴァシリ目線で展開します。これが、客観的に尾形を見ることができて面白い回でした。
ヴァシリは、尾形に撃たれたイリヤ(ヴァシリの戦友)に見向きもしません。心配もしないのです。ヴァシリには、戦友を撃った男への憎しみはないという。憎しみに駆られて銃を撃つ者は狙撃手には向いていないんだそう。
ではどんな人物が向いているのか。それは、冷血で、獲物の追跡と殺人に強い興味があるような人間。
つまり、ヴァシリや尾形のことを言っているわけですね。これに付け加え、尾形は「狙撃手に向いている奴ってのは臆病なまでに慎重なもんだ」と言っています。まるで肉食動物。
ヴァシリはまさにそういう男で、キロランケの罠にかかった仲間が次々と瀕死の重傷を負うにもかかわらずただ尾形攻略のみを考えています。端で激しくうめき声を上げている人間がいるのに、すごい精神力ですね……。というかそんな気持ち持ち合わせていないのかも。
尾形もこんなことでのこのこ姿を現すとは思っておらず、長期戦にもつれ込みます。
尾形の粘り勝ち
ヴァシリは早々に、木の間に銃を構える尾形を見つけています。しかし微動だにしないので、これはおとりかもしれないと考える。
自分ならどうするか考える。よく見ると、銃を構える人間の足元には足跡を消した痕跡がある。それをたどるとウイルタの棺。そうか、銃を構えているのは亡骸を使ったおとりで、尾形は棺に潜んでいる!
そう考えたヴァシリは棺を狙撃。何度も何度も撃ち込みます。
実は尾形が狙っていたのはこれでした。
ヴァシリが足跡を消した痕跡に気づくと知っていて残した。微動だにしなかった人影こそ尾形だったのです。何時間(どれくらいの時間かはわかりませんが)もジッと動かず、ただヴァシリが油断する隙を狙っていた。棺を狙撃するのに夢中だったヴァシリは攻撃に気づかず、横っ面を撃たれてしまいます。
この間、尾形は雪を口に含み続けて白い息がでるのを防いでいたんです。ものすごい集中力。シャリシャリ雪を食べる尾形の大コマは、初見ゾッとしました。
ヴァシリを倒した尾形はどっと緊張が解けたのか、倒れこんでしまいます。この163話のラスト1ページは丸々加筆されています。
勇作殿の幻影
雪を食べすぎたせいか、ずっと動かずに寒空の下にいたせいか、熱が出て体調を崩す尾形。
あまりに疲れ果て意識が朦朧としていたのか、尾形は目の前に死んだはずの弟・勇作の幻影を見ます。尾形に撃たれたあのときの姿のまま、血を流しながら微笑んでいる。
びっくりするのは、この勇作さんの幻影がアシリパさんに重ねられているということです。
走るソリで、尾形の前に立つのは勇作さん。血がたなびいている~~!!!
「寒くありませんか?兄様」
と心配する声。多分実際はアシリパさんが「寒くないか?尾形」って言ってるんでしょう。
童貞神話
ここからしばらく回想が入ります。
あるとき、尾形は勇作さんを酒の席に誘います。もう一軒いきませんか、と誘ったのは遊郭。
「処女は弾に当たらない」というゲン担ぎがあって処女の陰毛がお守りになったそうですが、童貞も同じように扱われたらしい。尾形はそう前置きをし、黙ってるから、童貞捨てちゃいなさいよ、とそそのかすのです。
旗手になる人間はとくに先陣を切って兵を鼓舞する役割があり、童貞は弾が当たらないからと兵も安心できたらしい。そうはいっても単なるゲン担ぎですから、旗手は最も死亡率が高かったという。
黙ってるから童貞捨ててしまいなさい。
しかし、兄の誘惑に「うん」とは言いませんでした。
襟を開けて両隣に女を侍らせる尾形は、「男兄弟は一緒に悪さもするものなんでしょう?」とか言って誑し込もうとしたんですが、うまくはいかなかった。
この件は童貞を捨てたという弱みを握って懐柔しようという鶴見中尉らの作戦だったのですが、うまくいったら勇作さんをどう使うつもりだったんでしょうね。
鶴見中尉が入ってきてサッと襟を正し正座する尾形。ええ~、さっきまであんなにワルみたいな風を装って、実は遊び慣れていないとかそういう??それとも上司の前だからきっちりするの?
なぜ尾形は勇作さんを撃ったのか
しばらくは様子見、と決めた尾形と鶴見中尉。
戦地に入ってからも観察しており、勇敢に振る舞い兵の心をつかんでいる勇作さんを殺さない方向で、と決まりました。
その夜か、しばらく後かは不明ですが、尾形は勇作さんを呼び出してロシア人捕虜を手にかけるよう言います。
旗手は兵を鼓舞する役割で、小銃すら持たないが、しかし他の者らが戦っているのになぜ勇作殿はそうしないのか。旗手を言い訳に手を汚したくないのか。
違う、という勇作さんに、じゃあこの男をやってくださいよ、と言いナイフを渡す尾形。
「勇作殿が殺すのを見てみたい」
これもゾッとする台詞です。今回尾形に何度ゾッとさせられるのか……。
見てみたい、そういってナイフを押し付けようとする尾形。おねだり攻撃!
でもこれだけ押されながら、勇作さんの決意も固い。なぜなら、「父上の言いつけ」だからです。
「お前だけは殺すな」
と言われていた。ゲン担ぎの童貞で、そして父上の解釈では、人を手にかけず清いままいることで偶像となり勇気を与えるのだと。
「なぜなら誰もが人を殺すことで罪悪感が生じるから」だと。
勇作殿、必死の弁。
でもね、尾形にそういう清い考え方は通用しません。なぜなら、持ち合わせていないからです。「そんなもの…みんなありませんよ」と。「そう振る舞っているだけでは?」「みんな俺と同じはずだ」
さっき「尾形は自分にないものは信じない」と言ったのはこれです。尾形には罪悪感がない。それはいいんです。驚くのは、自分にないんだから他人にもないはずだと思っていること。
実際尾形は清廉な勇作殿がそのままでいるのが許せず、同じところまで引きずり込もうとしていたわけですよね。自分と同じく人を手にかけ、汚してしまおうと。
これは勇作殿が清く正しいのは手を汚していないからだという理論なんでしょうかね。自分と同じところまで落ちてくれば、勇作殿だって俺と同じはずだ、となるのか。
勇作さんはこんなことを言う尾形を本気で案じ、「罪悪感を微塵も感じない人間がこの世にいていいはずがないのです」とまで言ってしまいます。
尾形、これにイラっとしたんだろうな。イラっとしたどころではない。存在を否定されたわけですから。
尾形はこの後、軍旗を持って先頭を走る勇作さんの頭を撃ち抜きます。
ここまでは尾形が「自分が撃った」という言葉しか証拠がありませんでしたが、ここで尾形が確かに撃ったと判明。もしかしたら敵に撃たれたものを自分が撃ったことにしたのかと思っていましたが、そうじゃなかった。
撃たれた勇作さんが一度振り返り、ここで初めて、うっすらとこちら(尾形)を見る目が描かれています。回想にしか登場しない勇作さんは、回想している尾形の意思で意図的に目が視界に入らないようになっているのですが、ここで唯一目が合っている。
尾形は勇作さんを撃って何を感じたのか。私は尾形が罪悪感とやらを知りたくて、好奇心で撃ったのだと思っていますが、罪悪感を感じたのでしょうか。
回想で勇作さんの目を見ないようにしているのはもしや、罪悪感があるからなのか。
今もなお幻影に見るくらいなので、尾形は自分が手にかけた肉親のなかで唯一、勇作さんの件に関して後悔している、あるいは罪悪感を抱いているのではないかと思っています。
その後悔って、勇作さんを清いまま逝かせてしまった敗北の念なのかもしれませんけどね。そこは最近の本誌の、アシリパさんへの投影にも見られます。
白石の選択
アシリパ組の良心ってもう白石しかいないのですが、ほんとにいいやつ……!
尾形が弱っている隙に逃げちゃおうぜとアシリパさんに持ち掛けるあたり、まだ杉元との約束を守ろうとしているのがうかがえます。
実はロシア軍に追われた件で、キロランケの過去が判明。本名はユルバルス。皇帝暗殺の実行犯で、20年も追われている男だったのです。
白石はこれでヤバい連中の中にいると思ったんでしょう。それ以前からだいぶヤバかったのですが、今がチャンスと思ったんだろうな。
こっそり話を聞いていたキロランケも逃げたいなら好きにしたらいい、と言います。尾形も、刺青の写しは鶴見中尉も土方も持ってるから別にいなくてもいいという。ここまで一緒に来た仲だというのにさすが尾形、冷たい。
アシリパさんは行かないと言うので、白石ひとり離脱することになったのですが、やっぱり杉元との約束を違えることができなかった白石。三人を追いかけて合流します。
白石、いいやつ……!
ちなみに、ここでアンマーたちがトナカイの肩甲骨を使った占いをしてくれるんですが、白石が三人と一緒に行くことを選んだ時に、誰も見ていないところで「誰かが死ぬ」という結果が出ています。
これはのちのちの伏線になっているのですが、どっちを意味しているのかちょっとまだ考え中です。19巻あたりの内容なのでこの記事では触れないでおきます(※そのネタバレは本誌の感想記事にあるので、気になった方はバックナンバーを見てください)
死に重ねる尾形、光(生)に重ねる杉元
尾形がアシリパさんを勇作さんと重ねていることは触れましたね。
熱にうなされ、勇作さんを撃ったできごとを回想していたシーンの直後、目を覚ました尾形の目に入ったのは、さっき振り返って尾形を見た勇作さんと同じ構図のアシリパさん。
この場面で、尾形は偶然でもなんでもなく二人を重ねていることがハッキリしました。アシリパさんを見る目がめっちゃ怖い。私たちには見えないだけでずっと重ねてるのかしら……。
これと対照的なのが杉元です。167話、ソリで走行中に吹雪にあった先遣隊。杉元・谷垣・チカパシの三人が同じソリに乗っていて、月島軍曹・鯉登少尉・エノノカ・ヘンケ組とはぐれてしまいます。
まあハッキリ言うと遭難しかけているわけですが、マタギがいるおかげでなんとか犬と火で暖を取ることに成功。
谷垣から「け」とカネモチを分けてもらった杉元は、過去戦地で食べた味をかみしめながら寅次と戦争のことを思いだします。寅次を喪い、鬼のようにただ戦う杉元を現実に引き戻したのは、「杉元…」というアシリパさんの声。
もちろんそんなはずはないのですが、夢か過去の記憶か、暗闇の中にいた杉元は光がさすのを感じるのです。そして目を開けると、吹雪の向こうに確かに光を見る。
これは月島軍曹たちが駆けこんだ燈台の明かりでした。
「光だ…」
このつぶやきは燈台の明かりだけを指しているのではないでしょう。
尾形が勇作さん(死)にアシリパを重ねるのに対して、杉元は光(生)にアシリパさんを見出している。二人の立場、行く先を暗示するかのような象徴的なシーンです。
先遣隊は和む
それにしても、前半から心臓に悪い内容が続いた17巻。先遣隊のターンになってやっと心が落ち着きます。
燈台が物珍しいのか鯉登少尉はウロチョロするし(このおかげで光がチラチラ動くから杉元たちは「月じゃなくて燈台だ!」と気づけた。グッジョブ)
死ぬところだった三人が燈台に入ってみれば、吞気に優雅にお茶している少尉。この人、極寒の地で不用意に金槌にさわってしまい手がくっついてしまうなど、余計なことしかしません。
尿をかければ取れるよ、という月島さんの知恵を実践しようとする杉元。フェードアウトしたけど、本当にかけたんでしょうか。
しかし最近オシッコネタ多いな。
杉元たちは助けてくれた燈台の持ち主の身の上話を聞き、一人娘が出て行って行方知れずだと知ると、これから先で探してみると約束します。
生きているか死んでいるかわからない娘の話に、真剣な目の軍曹。いご草ちゃん……。
キロランケは新たな目的を示す
そしてアシリパ組。
キロランケは過去の仲間のひとりであるソフィアに会いに行こうと提案。ソフィアは亜港監獄に収容されているゴッツイ女の人です。ラピュタのドーラみたいな人。(ドーラも若いころはとても美しかったのと同様に、ソフィアもそりゃー綺麗だったのですよ)。
キロランケはソフィアと連絡を取り、亜綱監獄を爆破して全囚人を逃がす計画を立てます。
質問箱にいつもすごいネタが潜んでいる
DVD同梱版にはポスターがついていて、その裏にはアニメ版声優の質問に野田サトル先生がお答えするよ~という質問箱があります。
15巻でもありましたが、ここに意外にも重要なネタが潜んでいることが多いのです!同梱版は高いけど、これだけでも買う価値があると思っています。
金槌が取れない鯉登少尉がオシッコを被ったのかどうか、そのネタもありますよ。
一番有益な情報をお知らせします。尾形は公式で美形だと判明しました。ハ~…!美形!…美形?美形なんですってよ!
ファラオだファラオだとは思ってたけど、たまに美人だと思ったり、な~んだただのオッサンかと思ったり、コマごとに尾形に対する印象は結構変わるのですが、美形!作者がそう認識しているということは美形なのです。
いいこと聞いた。
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