漫画『ちはやふる』42巻【ネタバレ感想】千早とかなちゃんの友情

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引用元:講談社(https://be-love.jp/c/chihaya.html)
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『ちはやふる』42巻を読みました。

41巻は初詣のあたりで終わり、今回はいよいよクイーン戦です。千早が大盤係を後輩二人に任せることにしたのは、どうやらかなちゃんの受験に配慮したためでもあったようです。

42巻もいろんなテーマがぎゅっと詰め込まれていますが、何となくかなちゃんとの友情がベースにある感じです。表紙もこの二人ですしね。

『ちはやふる』は、講談社のマンガアプリコミックDAYSで一部無料で読むことができます。

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41巻の感想はこちら↓

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千早とかなちゃん

クイーン戦の前、千早はかなちゃんの家を訪れています。冬なので、着物に合う上着を借りに来たのかな?

そこでおそらく千早は初めてかなちゃんの部屋に入るのですが、そこで千早は「3年も友達やってるのに知らないことがたくさんある」とつぶやきます。

密度の濃い3年を過ごしてきたはずだけど、それでも知らないことがある。でも、その知らない部分を新たに知ることができて「うれしい」と思える間柄なんですよね。

受験生なかなちゃんですが、お母さんの後押しもあって近江神宮へ応援に行くことを決意します。(大盤係をできなかったのはかなり悔しかったのだと思う(笑))

かなちゃんの着物

このあと、千早はクイーン戦前夜にホテル到着後トラブルに見舞われます。なんと姉・千歳のスーツケースと入れ替わっていたのです。手配した父が間違えたのでした……。

千早のスーツケースにはもちろん袴が……。千歳が夜行バスに乗ってまで届けてくれることになりましたが、大雪のせいで間に合わず。千早は大盤係のひとり・田丸さんの袴を借りることになります。

実は田丸さんが使う予定だった袴はかなちゃんに借りたものでした。

当日、袖を通した千早は、かなちゃんが用意してくれた足袋(寒いから裏起毛の足袋をくれた)、借りたコート、そして着物全てからかなちゃんの存在を強く感じます。

出発前、当初応援に行く予定ではなかったかなちゃんは、

「私の全部で千早ちゃんを守りますよ」

末次由紀『ちはやふる』42巻/講談社

と応援の言葉をかけました。千早はかなちゃんの存在を強く感じて試合に挑みます。

千早の着物は遅れて届くでしょうが、これはこれで良かったのでは?と思いますね。1巻冒頭のクイーン戦のシーンを見るとかなちゃんの着物とは違う(半襟の色も違う)ので、多分途中で着替えるのだとは思いますが。

大雪のせいで応援に来たかるた部一同は全員間に合わないのですが、かなちゃんと机くんがくれた専任読手の音源、近江神宮での思い出、全部が後押しになっています。

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男女差のない競技かるた

千早初挑戦となるクイーン戦。名人戦はずっと五回戦制でしたが、クイーン戦は三回戦制でした。それが今回、千早たちの希望もあって五回戦制になりました。

実はこれ、ものすごくタイムリー。実際のかるたクイーン位決定戦でも、2019年から五回戦制になっているんです。

実際のクイーン位決定戦を見てみると山下クイーンが防衛しているのですが、内容を見るとおもしろい。実は挑戦者の森田さんが1・2回戦は勝利しているんです。これが三回戦制のままだったら山下クイーンは防衛できていなかったのでは?三回戦制なら二戦先取すれば勝ちですからね。でも五回戦制になったからこそ、どうなるか読めなくておもしろかったのではないでしょうか。

実際のクイーン戦がなぜ五回戦制にになったのかはよく知らないのですが、『ちはやふる』では男子と違うことに対する不満とか後悔がいろいろ語られます。

そもそもなぜ名人は五番勝負なのにクイーンは三番勝負でこれまでやってきたのかがよくわからないんですが、「なぜ女ばかり……」という部分はめちゃくちゃ共感できるところですね。こういうのは伝統ありきで、形骸化してしまったものも多いのではないでしょうか。「ずっとこうしてきたからこうなんだ」とか、もはや理由もわからなくなってしまった伝統は変えてしまえばいい。

「小さいころから部活でもかるたでも男子と同じ土俵で戦ってきた」

「男女差のないかるたに育てられてきた」

と語り、五番勝負を許してくれたことに感謝する千早の言葉はスカッとします。過去のレジェンドクイーンたちもね、「もっとはやく五番勝負になってたら」という気持ちがないではないのですが、今変わったことをうれしく思っているのです。自分たちは享受できなくても、現役世代の子たちに間に合ったのならそれでいい。

かるたには男女差がないというところは、もうずっと前から触れられてきたこと。そうでなければ千早は新と太一とチームを組むことはなかったでしょうし、物語の始まりに関わる大きなテーマでした。

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紫式部と清少納言になぞらえて

紫式部と清少納言。とにかく比較される女流作家ですよね。物語と随筆で分野は違いますが、平安を代表する二大作品です。おまけにこの二人が仕えたそれぞれの主人はどちらとも一条天皇の中宮という共通点まである。

もっとも、紫式部が彰子に仕え始めたころには定子は亡くなっているので、清少納言も後宮から去っています。実際に会ったことはなかった。

ライバルだ、なんて言われますが、それは紫式部が一方的に意識していただけかもしれないという……。『紫式部日記』を見ると女流歌人や作家、女房たちの評があるのですが、中でも一段とひどくこき下ろされているのが清少納言なのです。

これはまあ、個人的に気に食わなかったところもあるのかもしれませんが、いまだに「定子サロンはよかった」「彰子サロンは地味だね」なんていう世間の空気を変えようと工作したのかもしれません。あっちを下げてこっちを上げる作戦ですね。これはもちろん主人である道長の命によって行われたことでしょうね。

一方の清少納言は、その後の資料がないので、紫式部をどう思っていたのかは全くわかりません。作品を読んだのかもしれませんが、どうでしょうね。

紫式部の詩暢と清少納言の千早

クイーン戦の陣決めは、「よをこめて」と「めぐりあひて」の札をそれぞれが引いて決定します。かるた競技でまでライバルを並べるとは(笑)

「めぐりあひて」の札を引いたのは詩暢ちゃんでした。詩暢ちゃんはこれで4回連続紫式部を引いたことになります。彼女は紫式部で勝ってきたんですね。

千早は「よをこめて」の清少納言。

なんとなく、性格的にも二人に合った歌人だなあと思います。紫式部は『紫式部日記』を読むと、結構陰気なんですよね(笑)あの日記は主家の記録的側面もありますが、夫の死後世をはかなむ感じがなんともいえません。インテリ女性の生きづらさ、今に共通するテーマです。

詩暢ちゃんも陰陽どちらかといえば陰のタイプですよね。はっきりと気持ちを表現しない、京都人のイケズでねじ曲がってしまう部分もあるのでしょうが、やっぱり「明るい子だね!」とは言えませんよね。

一方、清少納言は「をかし」の文学『枕草子』の人です。『枕草子』を読むとよくわかりますが、この人はオタクでありながらリア充・パリピというチートな人です。定子サロンの女房の、おそらく代表格。数々の男性貴族とやりとりをしては、持ち前の漢文知識でやりこめる、なんてことは日常茶飯事。

定子の元へ出仕し始めた当初は「恥ずかしくて恥ずかしくて……!」っていう描写もあるんですが、慣れると才能を開花させたようです。

世の中の素敵なことをひとつずつ拾い集めて『枕草子』にまとめた清少納言は、やっぱり陽の人でしょう。千早はかるたの楽しさに目覚めてそのままひた走ってきましたから、そういうところは「をかし」の清少納言っぽいですね。

さて、詩暢ちゃんは紫式部で3回勝ってきたわけですが、今回はどうなるのでしょうか。43巻は第一戦が始まります。

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