ゴールデンカムイ227話「共犯」【本誌ネタバレ感想】何もかも飛び越えるのはやっぱり愛。

ゴールデンカムイ 最新話ネタバレ感想 エンタメ
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ゴールデンカムイ最新話227話を読みました。

あんなところで終わって、合併号だったので、ほんと2週間が長かったです。(おかげで心の準備もできたけど)

今回も時重編の続きです。

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前回の感想はこちら↓

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理性を越えていくのは愛。

前回の時重の思わぬ行動、鶴見中尉さえぶったまげる展開でした。篤四郎さんも急いで止めに入りますが、もう遅い……。智春くんは苦しそうな音を出してはいるものの、失神してしばらくすると死んでしまいます。

篤四郎さんは当然「何でこんなことしたのか」的なことを聞くのですが、時重はアルカイックスマイルで「自分は気が進まないのに篤四郎さんが広いところでやれって言うから」なんて言うわけです。こわい。

篤四郎さんは「親友なのに」と言いますが、まあやっぱり時重は智春を親友だなんて思っていなかったわけです。前回の短い一話だけでも、時重と篤四郎さんの会話に割って入ること3回(たぶん。すみませんうろ覚えです)。時重はいつだって「篤四郎さんとの時間」を邪魔されたと思っていたのです。

智春の立場

時重はやっぱり、自分と智春の違いをちゃんと客観的に見て、立場の違いをわきまえて我慢していました。

  • 智春の父親は陸軍第二師団の偉い人であり、篤四郎さんに目をかけてもらっていた。
  • 智春は陸軍幼年学校に入って(ここは前回の予想通り)将校になり、今よりもっと篤四郎さんに近くなる。
  • 進学することを黙って見下していた(ここは時重の主観でしょう)。

これらをずっと不満に感じつつ、我慢して、許していたのですよ、時重は。

唯一の「一番」を奪われる

ギリギリまで我慢していたのに、ついに許せないことが起こりました。智春はとうとう一線を越えたのです。というか、きっかけは篤四郎さんの一言ですが。

身分から何から智春に劣っていて、大好きな篤四郎さんも自分より智春を気にかけている。それでもしょうがないと思っていた、なんとか許せていたのは、「君は今まで見た子のなかで一番才能がある」と篤四郎さんが認めてくれた、柔道があったからです。

しかし、篤四郎さんは進学で時重と離れるからとメソメソしていた智春を励ますために、

「気持ちの強さは時重くんに負けていない その気持ちがずっとあればきっと智春くんのほうが強くなるよ」

野田サトル「ゴールデンカムイ」227話/集英社より

と言ったのです。

外にいた時重にも聞こえました。時重はこれが許せなかった。篤四郎さんが「一番だ」と認めてくれた唯一のこと。時重にとってはそれがすべてだったのです。

ここで憤慨して感情をぶちまけるところは年相応の少年だなあと思うのですが、なにせタガが外れているので恐ろしい。というか、時重の愛はすべて篤四郎さんに注がれているのが問題ですね。0か100かしかない。

だから、篤四郎さんが「すまなかった」と謝って「あれは智春をはげますための方便だ」というと、あっさり機嫌を直すのです。「キミは今でも私の一番だよ」と言われると、「なんだあ」とニッコリ。子どもだあ……。子どもだが……。

時重は友達と思っていなかったかもしれないけど、自分を親友と見ていた、先ほどまで生きていた智春を「それ」と呼んでしまうところも怖い。

0か100だから、時重には智春が死のうが「何でもないこと」なんでしょうね。

「共犯」

こうして、時重と篤四郎さんは共犯になりました。智春は篤四郎さんの馬に蹴られたことにして智春父に伝えました。すると父親は怒り狂って馬を撃ち殺したと。

過去編突入前の、倒れた馬の描写はここにつながるんですね。そして過去編の最初の、「馬に蹴られるから危ない」というシーンも、「智春が馬に蹴られて死んだ場所(たぶん地域の多くの人は知っている事件)」だから、「ああいう事故がまた起こるから、危ないよ」という台詞だったんですね。

時重は智春を殺した場所を「聖地」と呼んでいますが、それは智春を殺したことが特別な出来事だからではありません。智春を「それ」と呼ぶ時点で、彼の死がなんら響いていないことはわかります。

特別なのは、「篤四郎さんと秘密を共有した出来事/場所」であることです。

「僕の童貞喪失」なんて言ってお前……。

時重はあれ以来、何度もここへきては思い出すんだそうですよ……。おそらく篤四郎と秘密を共有した興奮を。

計画を変更せざるを得なくなった?

篤四郎さんは、自分の馬が智春を殺したことになっているので、智春の父に逆恨みされて第二師団にいづらくなったそうです。これで第七師団に入ることになるんですね。

前回の感想のコメント欄に、「智春の父は海軍上層部で、本来は鯉登親子ではなく智春から海軍を利用する算段だったのでは?」とコメントを残してくれた方がいました。結局智春の父は海軍ではなく陸軍でしたが、やっぱり「偉い人」なので上層部だったのでしょう。

鶴見中尉はおそらくこのころにはいろいろ構想を練っていたと思うのですが、多分変更を余儀なくされたでしょうね。

でも第七師団が置かれるのは日清戦争後なので、どっちみち離れることになったのかも?ともかく、鶴見中尉にとっては中央から離れるのは好都合でもあった。ずいぶん自由に動けるようになりますからね。

生まれながらの兵士を見つけた

また、この事件はうれしい誤算でもあったでしょう。時重という逸材を見つけられたからです。前回までは「トキシゲくん」呼び(対して智春は「智春くん」と漢字表記で呼ばれた)だったのに、今回から「時重くん」呼びになっているのは、どうでもいい存在から格上げされたからでしょう。前回までは「智春くん」が重要な存在でしたから、トキシゲはあまり気にもされてなかった。

篤四郎さんは「第七師団で待ってるよ」と言って時重と別れます。

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なぜ鶴見中尉はたらし込むのか

鶴見中尉は日清戦争を経て気づいたことを、武田先生に伝えます。どうやったら兵士たちは「発砲するふり」をしなくなるのか。ちゃんと敵兵を攻撃できるようになるのかを。

鶴見中尉は

「殺人への抵抗を飛び越えられる人間について考えさせられる出来事がありまして」

野田サトル「ゴールデンカムイ」227話/集英社より

と全容を語りませんでしたが、まあこれは智春が死んだ事件ですよね。これがずっと引っかかっていて、そのあとに日清戦争を経験し、答えを見つけた気がするといいます。

兵士の攻撃性を引き出すのは、恐怖や敵兵への憎しみ、政治思想の違いなどでもない。「愛」だと。

鶴見中尉がたらし込んだ兵士たちは、いずれもタガが外れた奴らです。

「愛」が原動力になると気づかされた存在である時重については、たらし込んだというより向こうが勝手に崇拝してきたという感じですが、続く月島軍曹、鯉登少尉、尾形は意図的にたらし込んでいます。(尾形がちゃんとたらし込まれていない、というのはまた別の問題ですが)

なんでも、背中を預ける戦友っていうのは、夫婦以上の「強い恋愛関係」くらいのものだそうですよ。(じゃあ菊田と有古なんて意図的でもなんでもなく天然ものの関係じゃないか……)

鶴見中尉は時重の暴走でひっかかりを覚え、日清戦争を経て、この仮説にたどり着いたのです。こうやって月島軍曹たちはたぶらかされていったんですね……。

すべてのはじまりである時重はやっぱりとんでもねえ存在ですね……。過去編から現在軸にもどり、札幌の連続殺人犯について話す菊田と宇佐美。犯人は「殺しのための殺し」をしてるので、「間違いなく殺害現場に戻ってくる」と宇佐美は断言します。(まあ、犯人は犯行現場に戻ってくるってよく言うもんね)。何でかっていうと、何度も自分の殺しを妄想して○慰行為をするような変態に違いないからだそうですよ。「僕には分かるんです!!」って。なぜなら僕もそうだからーーー

月島軍曹は信じない

一方、病院の月島軍曹、鯉登少尉、二階堂、インカラマッ。

鯉登少尉は二階堂の義手を隠して、あわてふためく二階堂を見て笑っています。そこへ、千里眼で探してあげるというインカラマッ。

誰が見てもどこにあるか見当がつくというものですが、ズバリ当てられた鯉登少尉は驚き、インカラマッをめちゃくちゃ信じる。どれくらい信じるかというと競馬の時の白石くらい信じる。見事に魔除けのイケマ(1本1円20銭)をつかまされています。当時の1円がどれくらいの価値かというと、換算すると4000円くらいですが、庶民にしてみりゃ2万円くらいだそうですよ。(下のリンク参照)

明治時代の「1円」の価値ってどれぐらい?(1) | お金の歴史雑学コラム | man@bowまなぼう
めざせ!おカネ雑学王!貨幣の歴史、昔と今のお金の価値、お金の単位・素材など、お金にまつわる雑学・豆知識

しれっと値上げしてるのが笑える。人を見て商売してますね、商売上手だ……。

鯉登少尉は「試しにお前も見てもらったらどうだ!!」と月島軍曹に言いますが、「結構です」と消極的。インカラマッも見つからないものや探しているものはないか、と聞きます。

そりゃ、ある。月島軍曹が何よりも誰よりも探しているのは、いご草ちゃんです。

月島軍曹はあの特徴的なくせ毛を思い出したところで、

「オレを手懐けようなんて思うなよ」

野田サトル「ゴールデンカムイ」227話/集英社より

と牽制するのでした。

そりゃーもう二度と誰かに手懐けられたくはないだろうな。鶴見中尉がもたらした「いご草ちゃん」の消息に一瞬心を持ち上げられ、のちに海の底まで落とされたんですから。月島軍曹にとっては立ち入らせたくない、絶対に触られたくないところです。

そうはいっても、マッちゃんももう帰ってきてるはずの谷垣が一向に現れないから、とっかかりを作って聞き出したいんだよ……。

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