ゴールデンカムイ236話「王様」【本誌ネタバレ感想】自分のために生きてきた男と、人のためにしか生きられない男。

ゴールデンカムイ 最新話ネタバレ感想 エンタメ
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ゴールデンカムイ最新話236話を読みました。

郵便配達のおじさん、まだ騒いでます。

こんなタイミングでお目にかかるとは思わなかったんですが、杉元の過去、家族初登場です。

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前回の感想はこちら↓

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なぜ刺青人皮の暗号は解けない?


ゴールデンカムイ 21 (ヤングジャンプコミックス)

アシリパさんが危ないからと怒った杉元はさすが手が付けられませんでしたが、アシリパさんが止めに入って両者軽傷で済みました。あのまま続けてたら海賊は重傷だったでしょうね。その間、あの杉元をして「あいつが一番やばい」と言わせしめた郵便配達人を川に落とし、郵便配達人自身の命とそれ以外の乗客の命を救ったアシリパさんすごい(笑)

前回、刺青人皮の暗号はもう解けないという噂があると言った海賊。これは大方の予想通り、24人もいれば何らかの事故で死んでしまうこともあるし、24枚確実にそろう可能性のほうが低い、という話でした。

海賊は一年ほど前に親分(若山)に会っていて、この話をされたようです。親分自身、脱走してすぐひとり殺して人皮を手に入れたものの、茨戸にて博打に大負けして手放しています。あの茨戸編の人皮は親分の仕業だったんですね。

ていうか、親分に近づいて刺青人皮を手に入れようと考えた海賊、なんでか知らんが布団の上で素っ裸で転がされてて笑う……色仕掛けで手に入れようとしたんか……そうなんか……?

姫が言ってた「浮気相手」って房太郎のことだったの??

親分が予想だけで暗号解読が不可能だと思い至るとは思えませんが、この前の顔面入れ墨男の件で何かあったんでしょうか。アシリパさんは

「若山の親分のがっかりした顔もいい顔だったな~」

野田サトル「ゴールデンカムイ」236話/集英社より

というあの男の言葉を聞いています。顔面入れ墨男は一度親分に狙われ、親分が諦めるほどのことがあったんでしょうか。やっぱり暗号の上に入れ墨を重ねてわからなくした、とか。

王様になりたい海賊

海賊房太郎が金塊を手に入れて何をしたいかというと、どこか東南アジアの小さな島の王様になって暮らしたいんだそうです。これも別の意味での海賊王か。

元々白石のことは気に入っていたようですし、また杉元の強さを見せつけられたことで、二人を仲間にしたいと言い出す海賊。先週から見てる感じだと、確かに海賊は白石のこと好ましく思ってるんだろうけど、白石のほうはなんか苦手そうなんですよね。脱糞王は向こうからべたべたしてくる人間は好きじゃなさそう。

これで「国」を求めるのは何人目か。その中でも最も欲深ですよね。欲望が明らかで、嘘がなくて見ててとても楽です。鶴見中尉とか土方歳三とか、あの方々は周辺の人間含めややこしすぎる。

王様になったら子どもをたくさんつくって家族の国を作るという海賊は、杉元に「家族は?」と問います。

うわーーーーとうとうきますよ。他の誰もが触れてこなかったところを、この底抜けに明るい男がつついてしまいました。杉元の家族が結核でことごとく亡くなったというのは物語冒頭で語られたところですが、それ以外はまったく描かれませんでした。

これを聞いた海賊は、自分も疱瘡で家族を失ったと言います。だから王様になりたいと思ったのだと。疱瘡も結核も、周囲には煙たがられる病気です。自分に力があったら、王様だったら、だれも自分を遠巻きに見て疎んじることはないのに。この出来事以来、疱瘡を恐れるのはやめて、つとめて前向きに明るく振る舞うようになったといいます。最初は無理して明るく振る舞ってたのかもしれないけど、今はそれが板についちゃってこんな感じになったんでしょうかね。

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自分のために生きる

杉元は父親のことを思い出します。

結核にかかって、もう長くない様子の杉元父。めちゃくちゃ似ていていい男です。

顔も似てりゃ性格も似るのか、父は優しすぎる息子のことを案じます。優しすぎるから損な役回り。自分もおせっかいだった、と。でも、父の言うとおり性格ってなかなか変わらないものです。

江戸時代ごろは黒猫を飼うと労咳(結核)が治るなんて迷信があったようですが、黒猫がいてもちっとも治らない、役に立たないな、と黒猫の尻をポンポンたたく杉元。もうほかの家族は亡くなって、あとは父だけなのでしょうか。縁側で黒猫相手に独り言をいい、唇をかんで涙をこらえる杉元の表情を見るとこっちが泣きそうになってしまいます。

杉元の父は、息子に家を出るように言ったのです。このまま家にいては遅かれ早かれ杉元も結核にかかってしまう。だから家を出ろと。「優しすぎる」息子は、このままでは死にかけの父親のために命を無駄にしてしまいかねないから。

「自分のために生きるのは 悪いことではないんだぞ佐一…」

野田サトル「ゴールデンカムイ」236話/集英社より

父に背中を押された杉元は、走って家を飛び出します。しかし、すぐ引き返している。家族の看病をしてきた杉元もいつ患うかわからない。けど、父に生きろと言われたから絶対生きてやる。「不死身の杉元」はこの瞬間に生まれたんですね。殺せるもんなら殺してみろと言わんばかりに、父の看病から逃げない道を選びました。

海賊は杉元に、金塊を見つけたら自分の幸せのために何をするつもりだったのか、と問います。何か夢はないのか、と。

杉元はこれに答えませんでした。杉元は自分の幸せのために生きたことなんて一秒たりともないんじゃないでしょうか。家族が元気で暮らしていたころは別かもしれません。結核を患って以降は家族のため。家族が死んでからは、「自分のために生きろ」と言った父の最期の言葉を守るため。戦争では、どうでしょう、妻子がある寅次を守るため?寅次が戦死して以降は、目が見えなくなった梅ちゃんのために砂金を集めようと北海道へ行き、今は引き続き梅ちゃんの治療費のために金塊を探しながら、アシリパさんのために生きています。

まあ、強いて杉元の夢は何かと言われたら、大事な人が幸せになるのが夢なんでしょうね。お父さん、杉元は全然自分のために生きてないですよ。

むしろ「生きろ」が呪いになってずっとのしかかっている気がする。杉元はもう生きるしかないじゃないですか。杉元が不死身でいられるのは父の言葉と、その後は梅ちゃんのこととかいろいろあるかもしれない。裏を返せば、「自分のため」を選べるのなら、杉元は父を看病したあとに自分も結核で死んでたでしょうね。それを考えると、杉元がいま自分のために生きようと考え始めた途端不死身ではなくなるということか。

これほど自分の欲に忠実な男に出会って、杉元はどうなるんでしょう。同じように家族を亡くしながら、それ以降の生き方は大きく違います。

ていうか、よく考えたら金カムって「自分のために生きる」とは対極にあるテーマですよね、もともと。「天から役目なしに降ろされたものはひとつもない」ですから。誰もが何かのためにという役割をもっている前提で物語が展開しているので、なりふり構わず己のために生きるマン(王様になりたいマン)が出てくると少々戸惑ってしまいます。

海賊は「役目ありき」のこれまでの金カムの中で、逆説的存在になる?(杉元父もそれにあたる)

ここで思い出してしまうのが、同じ「親殺し」をした過去を持ちながら、天からかどこからかはさておき、生まれもっての境遇、性質をそのまま受け入れてダークサイドに堕ちていった月島軍曹と、「祝福される道もあったはず」と抗う尾形です。

親子を軸にキャラクターを見ると結構対比構造になってて、また「父」だけ見てもおもしろいことになります。

・祝福される道があるかも?と思って父を殺した尾形
・自分の好きな子を殺したかもしれない父を嫌悪して殺し、父のようにはなりたくないと思いながら、同じ血が自分にも流れていることで自己嫌悪に陥る月島軍曹
・生きてほしいと父に願われた鯉登少尉
・父にアイヌの未来のために戦うよう知恵を託されたアシリパさん
・父として生きる未来を失った鶴見中尉
・生きろという父の最期の言葉を守るために父を見殺しにした杉元

ざっとこんなもんでしょうか。ここに「母」を入れるとまた家永とか、江渡貝くんとかがいるんですけど。

今回の最後、海賊は現金書留をゲットし、杉元たちの荷物の中に平太師匠の煙草入れを発見します。まためんどくさいことになりそう。

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コメント

  1. MISAKI より:

    はじめまして。
    しゃかりきさんの鋭い考察、いつも楽しみに拝見させていただいております。

    第236話、杉元の過去編が描かれましたね。
    お父さんの「自分のために生きろ」との言葉で一旦家を飛び出した杉元ですがそのあとのコマで立ち止まり踵を返しているように見えました。
    家に戻り、療養所の病床が空くまでお父さんを看病したのかな、と捉えたのですが、どうなのでしょうか…?
    お父さんを置いてはいけない、結局最後まで優しい杉元だったのかなと思いました。

    • しゃかりき より:

      はじめまして。
      コメントありがとうございます。

      杉元はあのとき確かに最初は出て行こうとして、門の前で「俺は不死身だ」と言って引き返してますよね。父の最期の願いだし、言うとおり自分だけは生きようと一瞬考えたのかもしれない。でも父が「人の性格はそう変わらない」みたいなことを言っていたように、性根って変わらないもので、杉元は我を通したんだと思います。不死身だと鼓舞して。

      1巻の過去編を見ると杉元は父の死を知らされた後で家を燃やしています。近所の人々の台詞によるとすでに杉元家では3人死んでいて(ここに父が含まれるかはわかりませんが)、杉元は療養所から父が死んだという報せを受けてようやく出て行きました。

      結局は近くの療養所に父を任せるまでは看病したんでしょうね。自分の手から離れて療養所に送ることすら、自分だけ生きていることすら「見捨てる」ことだったのかもしれないなぁと思います。

      • MISAKI より:

        お返事ありがとうございます。
        しゃかりきさんのお返事を拝見して安心しました。
        そうですよね、「俺は不死身だ!!」と自らに言い聞かせて結局家に戻っていますよね。その後は1巻に描かれている流れで。
        しゃかりきさんが書かれた「自分だけ生きていることすら「見捨てる」ことだったのかもしれない」という考察はなるほどなと考えさせられました。そのような意味も含まれているのかと。杉元自身の幸せを願わずにはいられません…!

        • しゃかりき より:

          こちらこそ返信ありがとうございます。

          杉元は未だ自分のために生きることのできなき人ですが、尾形、月島軍曹、アシリパさんらの父子関係に比べると愛された子で、尾形の言葉を借りれば「祝福された」子ですよね。さらにほとんどのキャラクターが何かの役割を強いられている一方、自分のために生きていいのだ、と許された人物でもあります。
          最後は杉元が自分の幸せのために生きる道を選んでくれたら嬉しいですね。

  2. しまあじいさき より:

    こ、このたび晴れて父になったあの人のことは、あえて触れない方向でつか?!!

    • しゃかりき より:

      コメントありがとうございます。
      谷垣のことですね。
      ここでは父子関係のエピソードがあったキャラのみを挙げています。