ゴールデンカムイ206話を読みました。
手づくり映画の上映会のために金にモノを言わせて芝居小屋を借りる鯉登少尉、けっこう役者を楽しんだんだな(笑)
股間がばっちり映っていて赤面する杉元(&凝視するアシリパさん)、月島軍曹のおっぱいは生き物?
前回撮影した内容のシーンはちょこちょこ笑えるのですが、今回は一気に物語の山場を迎えました。
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前回の感想はこちら↓
アチャと母の在りし日の姿
シネマトグラフのコンビはやっぱり思いがけないものを隠し持っていました。10年以上前に小樽で撮影したフィルムです。そこに映っていたのは、まだ若いウイルクと、そしてアシリパの母の姿です。
アシリパさん以外は初めてウイルクの素顔を目にするのですが、反応はいろいろ。注目すべきはやっぱりアシリパさんの母ですよね。作中初めて登場します。
その顔はアシリパさんによく似ていて、快活そう。キサラリではしゃいだりヒンナヒンナしてたり、もうアシリパさんが大きくなったらこうなるだろうな、という姿でした。
そこにはまだ赤ん坊のアシリパさんも映っていて、慈しまれていたんだな、ということがよくわかります。
シネマトグラフはまだまだ欠点がある
一同は映像に見入っていたのですが、突如機械から発火し、フィルムが燃えてしまいます。光源も火花放電の光を使っていたり、フィルムに火薬の原料を使っていたりで、シネマトグラフには火災がついてまわったみたいです。だから撮影したからといって映像をずっと残せるとは限らず、大事なフィルムが焼失してしまうことはよくあったのだそう。
燃えていくスクリーンの中の母を見ながら、アシリパさんはシネマトグラフもアイヌを残す手段としては完璧ではないことを悟ります。
技術は素晴らしいけれど、自分たちのすべてを残すには十分ではなかった。アシリパさんは映像で母の姿を初めて見ましたが、そこにいたはずの自分は同じ記憶を共有していません。それよりも、父が繰り返し語って聞かせてくれた母の話のほうが生き生きしていて、「体温まで伝わるほど」自分の中に残っている、と気づくのです。
アイヌを残すためには?樺太の旅を振り返って
では、アシリパさんはどうするのか。
やはり道具に頼って残すことを考えるよりも、自分たちの存在や文化を大切にする気持ちを強く持たなければならない、と考えます。
キロランケに連れられてまわった樺太の旅で、アシリパさんは北海道にいただけではわからなかったたくさんのことを知りました。アイヌの民族は多種多様で、それ以外にも消えそうな文化があること。
「キロランケニシパやアチャの言う通り 守るためには戦わなければならないのか…」
野田サトル「ゴールデンカムイ」206話/集英社
結局この考えに行き着くんですね。そばで聞いていた杉元は沸々と怒りの感情を表出します。そして樺太に来る前からずっと芯にあった、「先頭に立って戦うのはアシリパさんじゃなくてもいい」という意見を初めて本人にぶつけるのです。
前からずっと言っていた、「ヒンナヒンナしててほしい」ということ。アシリパさんは多分うすうす杉元の考えには気づいていたんでしょう。金塊を手に入れたら何も知らなかったころに戻って暮らすことはもうできない、キロランケが命懸けで伝えたのに、もう無関係ではいられないと訴えながら、自分が渦中に入っていくことを杉元が反対するのは、杉元がアシリパさんではなく自分を救いたいからではないか、と問います。
ちょっと前、ヴァシリとお絵かきしていた杉元は自身の気持ちを吐露しており、アシリパさんはそれを聞いていましたね。アシリパさんと一緒にいると自分も綺麗なもののように思えて救われるというようなことを言っていたと思うのですが、アシリパさんはそれを決して好意的にはとらえていなかったことがここでわかります。
干し柿を食べていたころの自分をアシリパさんに投影して見ている、と言われた杉元は一部認めつつ、自分が反対するのはそれだけが理由ではないと語り始めます。
アシリパさんを誘導し選択肢を奪ったことが許せない
アシリパさんが金塊争奪戦の中心に巻き込まれていくことで、杉元が一番許せなかったこと。それはアシリパさんの意志に関係なく、ウイルクやキロランケが自分たちの志のためにアシリパさんを追い込んだことです。
ウイルクが「戦争で戦えるように育てた」と言ったことを、杉元はここで初めてアシリパさんに語って聞かせます。幼い娘を無理やり巻き込んだウイルク。樺太へ連れて行って「もう戦ってアイヌを守るしかないのだ」と思わせるように追い込んだキロランケ。
つまり、自分たちの目的に巻き込んで誘導し、まるで他の選択肢はないかのように仕向けたことが許せないのです。
地獄にいる杉元だから言えること
もっといえば、「戦う」ということは人を殺すことだって想定されているということ。それを親が言っていることも許せない。杉元は親になったことはないけれど、今までアシリパさんと過ごしてきた中で、人を殺してほしいとはとても思えない。アイヌでは人を殺せば地獄に落ちると言って生活のため以外の殺生を嫌います。アシリパさんは未来を生きるアイヌだけど、そういうアイヌの価値観をどう考える?と問う杉元。
戦争で多くの人を殺めてきた杉元は、干し柿を食べていたころの自分には戻れないと苦悩してきました。梅ちゃんの前に名乗り出ることができないのも、自分が変わったことを他者から(それも梅ちゃんから)突き付けられるのが怖いからです。
「もう二度と戻ることはできないから」と、「きれいなもののそばにいると救われる気がする」と、解決できない問題で小さな少女に縋って目をそらしている杉元。それだけ苦しんでるんですが、もう戻れないところにいるからこそ言えることがあります。
杉元は地獄を見た・地獄にいる立場として、それをまだ知らないアシリパさんには同じところに来てほしくない。だから金塊争奪戦から離れてほしい。なぜなら、地獄を知ってからではもう戻ることはできないからです。
決めるのはアシリパさん
杉元は真っ当なことを言っているとは思うのですが、自分もまたアシリパさんの選択肢というか、選択する自由を奪おうとしていることに気づいてるのかな?さっきウイルクとキロランケを批判した舌の根の乾かぬ内に……。
言いたいことも気持ちもよくわかるんですけどね。でも多分杉元が思っているほどアシリパさんは「守らなければならない小さな女の子」ではないし、選択するだけの考えはしっかり持っています。選ぶのはアシリパさんですよね。
「清いままでいてほしい」杉元と、違うことが許せなくて「引きずり下ろしたい」尾形ってやっぱり対照的ですね……。相手に対する親愛の情の有無も関係してるのかもしれないけど、尾形は手を汚した弟がどうなるか見たいっていう好奇心もあったわけでしょ。うーん。
さて、争いの渦中に誘導する者と引き離そうとする者、両者の気持ちを知ってアシリパさんはどうするんでしょうか。今回、杉元は初めてアシリパさんに「否」と言ったんじゃないでしょうかね?今までアシリパさんの考えに反対したことあったかな?
お互いの考えを初めて言い合った二人の距離は今後どうなるんでしょう。野田先生はどうやら大英博物館に行くようなので、しばし休載です。
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