「王国の子」完結以来、久しぶりの洋もの作品です。もちろん「極彩の家」も読んでるんですが、王国の子が終わった時はなんか寂しかったので、こういう雰囲気の作品をまた読めてうれしいです。
とはいえ、エリザベス女王の時代をもとに作られた王国の子とはずいぶん毛色が違います。ファンタジーだし。
第1話は秋田書店の公式HPで試し読みができますので、ぜひ↓
あらすじ:よくある政略結婚で嫁いだ王家は吸血鬼一族だった
主人公エイラはゴルトフルーエという国の王女で、最近勢力を増す隣国のロートフェルゼとの戦争回避のために政略結婚をすることになりました。
エイラの双子の兄であるエリアスは反対しますが、エイラ本人は肖像画で見た結婚相手・アロルドがとても美しかったので、結婚を前向きにとらえ承諾します。
16歳の誕生日にロートフェルゼの王家に嫁いだエイラ。この北国は「城に入った娘は二度と出てこられない」とかいう恐ろしい噂のある国で、実際城に入ったエイラ自身もなんだか不穏なものを感じます。
まあ単行本の帯に「吸血鬼の王子との結婚」とデカデカと書かれているので、もったいぶるまでもなく彼ら王家が吸血鬼だということはわかるのですが……。
第一王子で王位継承権第一位のアロルドは結構危うい立場。形式上人間として国を運営していくためには婚姻は必要で、かといって吸血鬼一族の城にただの人間をそのままウロウロさせておくわけにはいきません。
とくにアロルドの母であるデリーシアは、人間の血を飲もうとしないアロルドを「偏食家」「出来損ない」扱いし、第二王子のダグラスに王位を譲るべきだと考えています。この二人は吸血鬼であることに誇りを持っていて、おまけにダグラスは奔放。
アロルドは何も知らないエイラを一族に引き込むことをためらっていますが、うかうかしているうちにデリーシアやダグラスによって無理やりエイラを吸血鬼にされかねない状況で、選択を迫られた結果彼女の血を飲み、自分の血を与えて吸血鬼化させることに。
ところが……。
誰もが完璧な吸血鬼になれるわけではなく、不完全な吸血鬼になることもあるようで、目覚めたエイラはなぜか男の体になってしまっていたのでした。
エイラは女に戻れるのか?
完全な吸血鬼になれるかどうかわからないことを覚悟の上で受け入れたエイラでしたが、結果は不完全。人によってどうなるかはさまざまのようですが、エイラは男になってしまったわけです。
アロルドはこれをデリーシアをはじめとする一族に知られたら処刑される可能性がある、と逃げることを提案します。
とまあ、状況的には危ういんですが、実はアロルドは異性の血を受け付けない体質で、ある一面では「ちょうどよかったじゃん」と思ってしまいます。エイラを一族に迎え入れるため無理して彼女の血を飲んだけど、これからは妻が男なら無理する必要もないじゃないですか。かといってずっと男のままでも困るだろうけど、吸血鬼一族って別に生殖で一族増やしてるわけじゃないですし。
1巻を読むに、アロルド自身、王と王妃の実の子ではなさそうです。王と王妃はこの国に初めて入った吸血鬼で、長い年月をかけて一族を増やし、国を支配するに至ったとか。一族の増やし方は吸血鬼の血を分け与えることなので、生み増やす必要はないわけです。
アロルドが実の子じゃないなら多分ダグラスもなんだろうけど。
彼らが王子に選ばれ、そして王がアロルドを後継者に選んだ理由ってなんなんでしょうね。この辺もまだまだ謎です。
アロルドが異性の血を受け付けないのにも理由がありそうですし、一族の大多数とは思想を異にするのも、何か理由がありそう。
エイラが女に戻れるかどうかっていうのは、2巻になればおそらくわかるでしょう。多分心配するほどのことじゃない気がするし。
今後はエイラの双子の兄・エリアスや、獣人の黒猫でエイラについてロートフェルゼに来たロロンがどう関わっていくかが気になります。
吸血鬼がいれば獣人がいる、どういう世界なんだ。さすが掲載誌がミステリーボニータなだけあって、ファンタジーでちょっと謎で、ダーク。続きが楽しみです。そういえば「写楽心中」もミステリーボニータですね。おもしろい作品多いなあ。
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