漫画『ちはやふる』43巻【ネタバレ感想】いよいよクイーン戦・名人戦第一試合

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引用元:講談社(http://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000327525)
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今回の表紙のかえし部分の和歌は、光孝天皇の「君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪は降りつつ」です。

43巻の中でも太一と広史さんがこの和歌について言及するシーンがあります。若菜って特定の草花ではなく、春の七草のことなのですが、光孝天皇の時代には正月の子(ね)の日に若菜を摘む風習がありました。長寿のため、とか。

ちょうどこのかるたクイーン戦は大雪に見舞われていて、広史さんは「光孝天皇もこんな1月の雪の中だれかのために若菜を摘みに行ったならすごい」と言っています。

旧暦正月は1月下旬から2月下旬ごろなので、もしかしたら今の正月よりも寒かったかもしれませんね。ただ、そのころには梅の花も咲き始めていて、冬の寒さの中に春を感じられる、まさに「新春」の時期です。

まだ桜が咲く時期には遠いですが、クイーン戦の結果も極寒の中に春が芽吹くような感じになるといいですね……。

この調子だとあと数巻はクイーン戦続きそうです。

『ちはやふる』は、講談社のマンガアプリコミックDAYSで一部無料で読むことができます。

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大盤係にソワソワ……

千早は大盤係に後輩ふたり(菫・田丸)を選びました。第一試合で務めた菫ちゃんは、初めての仕事にちょっとまだ慣れません。

おまけに、クイーン詩暢ちゃんの大盤係は史上最年少10歳の竹内こころちゃん。

こちらはさらに札をはがすのに身長が足りずモタモタしてしまい、送り札の対応も遅れてふたりともてんてこ舞いです。

詩暢ちゃんがこのこころちゃんを大盤係に選んだ理由は、「今一番自分を好いてくれているから」だといいます。

こころちゃんは詩暢ちゃんにあこがれてかるたを始めますが、かるたで強くなるって思ったよりも簡単ではなく……。史上最速でA級になった詩暢ちゃんにはとても追いつけないのだ、と10歳にして悟るのです。

が、そんなこころちゃんに、「好きな気持ちはあなたをもっと遠くへ連れて行ってくれる」と言ったのが詩暢ちゃんでした。

物語開始当初から孤独・孤高という言葉を象徴するような存在だった詩暢ちゃんが、今や「好きな気持ちに実力が追い付かない人」「結果が出なくてもやり続けたいと思う人の気持ち」を知り、おもんぱかることができる人になっているのを見ると、この43巻の間に(詩暢ちゃんの登場はちょっと後ですが)随分変わったんだなあとしみじみ感じました。

芹沢の読みに奇跡なし

さて、試合のほうはどうかというと、第一試合は7枚差でクイーンの勝利に終わりました。

読手を担当した芹沢六段は、まったくブレることのない読みで定評がある人で、「芹沢の読みに奇跡なし」と言われているという……。

歌の内容からそれに合ったイメージを読みに込めない人物で、一字決まりを得意とする千早も翻弄されます。同じ「S音」でも、他の読手なら続く音につられてやや音が変わるのでしょうが、芹沢さんはそれに引きずられることなく一音一音を決まった音として出してるんですかね?

千早は得意札の「ちは」も取られてしまい、結果第一試合を落としますが、爪痕はしっかりと残していきます。

トップ独走の詩暢ちゃんは自分の後ろにいる人たちのことなんか意識しないで自分のかるたをやってきましたが、千早は詩暢ちゃんとのクイーン戦を常に意識して練習してきました。

千早が劣勢になってもこだわり続けたのが、詩暢ちゃんが得意とするクイーン陣の左下段と自陣の左下段です。これに気づいたのは確か、千早が右手指を怪我した時でしたね。16巻、なんだか随分昔のことのように感じます。

左手でやってみて初めて、右利きには取りやすくても左利きには取りにくい配置があること、左利きの人には右利きの人の囲い手がザルのように感じられるという(そこまでは言ってなかったかもしれませんがうろ覚えです)。この気づきがクイーン戦の今にしっかり効いてきているんですね。

こうして千早は詩暢ちゃんがイラつくほどに左下段を狙い続けますが、最後セイムのような一枚で、審判の「クイーンの取り」という判断によって試合終了。

千早は「自分の取りだ」と主張しますが、審判に委ねられて終わりました。これが詩暢ちゃんに結構響いていて、「本当に自分の取りでよかったのか」と不安に駆られます。

千早ははっきりと自分の取りだったと認識していて、対する詩暢はこの一件でうしろめたさを感じている。

第二試合以降、これがどう響いてくるのでしょうか。

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遅れていた面々が到着

クイーン戦当日は大雪で、間に合わない人が続出しました。かなちゃん、机くん、肉まんくんは42巻の時点で到着して第一試合を見守りましたが、太一や原田先生はまだ。

太一はスマホで試合を見ながら、京都駅で名人・周防さんの家族を待っていたのです。周防さんと同じで目が悪いという、兼子(ゆきこ)さんです。

で、偶然にもそこにやってきたのが、千早とスーツケースを取り違えていた姉の千歳です。高速バスでわざわざスーツケースをもってやってきました。

千歳は太一を見つけ、ちょうどいいからこれ千早に届けて、と立ち去ろうとしますが、太一が一緒に連れていくことに。グッジョブ。

したらば、今度は大津京駅からタクシーで近江神宮へ向かっている最中、原田先生と広史さんを発見。原田先生は転んでけがをしたらしく、広史さんに負ぶわれていました。

太一・広史さんは徒歩で、それ以外はタクシーで近江神宮へ向かいます。

なぜスーツケースを取り違えたのか

第一試合の後、スーツケース取り違え事件を起こした張本人の千早父も到着していました。

なぜ取り違えたかというと、送り状を貼るタイミングで片方を確認し、隙間からダディベアグッズが見えたから「こっちは千早のスーツケース」だと判断してしまったのだそう。しかしそっちは千歳のでした。

実はそのダディグッズって、中学時代の千早が、遠方ロケに初めて行く千歳のために作った御守りだったのです。千歳はそれを今でも大切にロケに持っていってて、こんな事件になってしまったのでした。

千早のかるたなんか無関心だった千歳が、千早のためにここまで持ってくるなんて泣かせますよね……。

千歳はデビュー以来、家族では千早よりも自分が優先されていて、支えられてモデルを続けてきたのをちゃんと自覚しています。だからこそ、千早の一番大切な日には、自分が無理をしてでも支えてあげたいと思ったんじゃないでしょうか。

これでやっと第二試合からは自分の袴で出られます。

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名人戦の新と周防さん

名人戦のほうは、4枚差で挑戦者の新が第一試合を制しました。

この結果を見ると、やっぱり芹沢さんの読みは耳が強みの千早や周防さんとは相性が悪いんですかね。

すべてのバランスが良い新は、永世名人の祖父に重ねられます。新の父・彰もそのひとり。

今回、名人の息子である新の父がなぜかるたには関わらず生きてきたのかが明かされます。物語開始当初も実家から離れて東京で苦労した様子が描かれていましたが、やっぱりあまりにも偉大な父に対するコンプレックスがあったようです。

彰は自分なりに、父に喜んでもらおうとかるたを覚えるのですが、「名人のこども」なのに他の教え子たちよりも覚えが悪く、コンプレックスに押しつぶされてしまいました。

できないかるたよりもおもしろいものはたくさんある。かるたなんていらない。

こうして自分からかるたと距離を置いたのに、生まれた新は物心つく前からかるたに触れて、おじいちゃんっ子で、名人の再来とか言われて……。

父親なりに、野球やサッカーをして遊びたかったでしょうに、新はかるた漬け。新父の身になってみるとなんかものすごくしんどい。

「長者に二代なし」ということわざがありますが、二代目ってなんかそんなイメージありますよね。徳川家康と秀忠にしろ、野球の長嶋親子にしろ。あまり表面上は見えないだけで、秀忠時代はいろんな政策をやってて頑張ってるんですけどね……。

ただ、凡人の父は誰よりも非凡な父と息子を見ています。新の母は「かるたの取りもおじいちゃんみたいでよく似てる」とだけ言いますが、新父は「こわくてこわくて、自分ではいられなくておじいちゃんみたいに振る舞ってるんじゃないか」と心配するのです。

以前、別の試合でも緊張した新がおじいちゃんっぽく振る舞って緊張を蹴散らす、っていうシーンありましたよね。今回もそれなんじゃないでしょうか。そして、それに気づいたのは新父だけだったと。

第二試合は山城七段の読み

第一試合の勝者である詩暢ちゃんの「うしろめたい気持ち」「クイーンの誇りの揺らぎ」と、新の「恐怖(?)」。

新は表面上では精神的に参っているようにはまだ見えませんが、父の不安は的中するんでしょうか。

勝者ふたりが不安を抱えるなか、敗者の千早は母が買ってくれた袴と姉の応援を手にし、周防さんのほうもおばが初めて近江神宮へ応援にやってきました。おまけに、第二試合の読みは「感じ」のいい千早・周防にとって有利な山城七段です。

千早は札の配置でもまた詩暢ちゃんを揺さぶります。

物語のクライマックスになるクイーン戦・名人戦ですから、すんなりストレートで終わるはずもありませんが、第二試合もかなりおもしろくなりそうです。

毎巻、ていうか1ページ単位でいろんな人物の思いが描写されてて、時系列で語るのはちょっと難しいちはやふる。千早を中心にしながら、すごい巧妙にできた群像劇ですよね。これをまとめる末次先生ってほんとすごい。

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