写楽心中 少女の春画は江戸に咲く2巻【感想※ネタバレあり】渓斎英泉と葛飾応為

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引用元:秋田書店(https://www.akitashoten.co.jp/series/9624)
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「写楽心中」2巻、読みました。1巻はたまきが絵師として開花するまでが描かれ、2巻は活躍する戯作絵師の渓斎英泉(けいさいえいせん)・葛飾応為(かつしかおうい)との交流から、もう一皮むけるといった感じでしょうか。

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渓斎英泉(池田善次郎)と葛飾応為(お栄)


写楽心中 少女の春画は江戸に咲く 2 (ボニータ・コミックス)

写楽の名で枕絵を描いてデビューを果たしたたまきは、吉原でぶいぶい言わせている渓斎英泉に会いに行きます。

たまきの枕絵は彼やその幼馴染のお栄に評価されますが、栄泉には一言「艶がない」と指摘されます。帰り道、たまきは悔しがって由太郎を押し倒しますが……。由太郎を怒らせて終わり、おまけにその様子を英泉に見られていたという散々な展開に。

実は「艶がない」とたまきに指摘した英泉自身、「女の人を知らない」(たまき談)のでした。これに蔦重は「まさか」と驚きますが、実はたまきの言う通りだったのです。子どものころの病気が原因で、英泉は男性機能を失っていました。

英泉の艶っぽい美人画は、「女を知らない」からこそ、「知りたい」という探求心がなせる業だったのです。

もっとも、実在の英泉に男性機能がなかったのかというとそうでもなさそうなんですが……。漫画での印象通り実際の英泉も奔放な感じで、酒と女が大好き。中年になると娼楼の経営までするほどです。

渓斎英泉は画号がいくつもあって、だんだんと作風は変わっていきます。本作では、お栄と心を通わせたことをきっかけに枕絵執筆からは徐々に離れていく、という流れで、英泉の転機を描く上で付け加えられた設定なんじゃないかと思います。

幼馴染として登場するお栄とは、葛飾北斎の三女のこと。このお栄(のちの葛飾応為)は、杉浦日向子先生の『百日紅』や、NHKでドラマとなった 『眩〜北斎の娘〜』 で知られます。ドラマでは宮﨑あおいが演じていたと思います。

これら作品をみても、また辞典を確認してみても、お栄は池田善次郎と確かに交流があったようです。善次郎は北斎宅に出入りしていて、 私淑していたといわれますから、まあ幼馴染といってもいい間柄だったのではないでしょうか。恋仲だったかどうかは定かではありませんが。

こののち、お栄は父・北斎の助手となり、浮世絵師・葛飾応為として活躍します。北斎が「美人画は応為に敵わない」といったほどの天才だったとか。

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たまきの襖絵

英泉は、お栄と触れ合い、心を通わせたことで、枕絵が描けなくなってしまいました。吉原ですでに以前から注文されていた枕絵です。

知りたい気持ちがあったから見事な枕絵を描けた英泉。知ってしまっては、もう描けません。

ならば代わりに、と蔦重はたまきに描かせることを提案します。「知らない」ことに関してはたまきもどっこいどっこいなのですが……。たまきは枕絵を描くために由太郎と交わった経験はあるものの、英泉とお栄のように、思う相手と心を通わせたことはありません。

ただ、英泉を訪ねた際に二人の様子を覗き見てしまったたまきは、英泉とお栄を介してその感情と、美しさを知ります。

ありのままの姿を受け入れた二人を見て美しいと感じた、心を動かされたたまきが描いた襖絵は、その後「写楽の娘」の名を広めるほどの作品になりました。

中盤、たまきは「写楽の娘」と名乗ることをためらっていました。写楽の娘であるという確証も、絵師としての自信もなかったからでしょう。しかし、襖絵を描き上げたたまきは自信をもって「写楽の娘」だと名乗ります。

たぶん、たまきが蔦重さんを好きでいる以上、自分が愛する相手に愛される、ということはまずないでしょうね。英泉とお栄との出会いを通じて、間接的にでもそれを体感?実感?できたのは、いい経験だったと思います。

たまきの襖絵は、また新たな絵師を刺激しました。今度は歌川豊国の娘です。「おぎん」と呼ばれたその人は、芸者として三味線の技術を身につけ、一本立ちしようかというところ。そんなときにたまきの襖絵を目にして感化されたのか、自分が持つのは三味線じゃなく筆だといって「写楽の娘」に宣戦布告します。

おぎんが豊国の娘ということは、歌川国花女(くにかめ/本名:きん)でしょうか?国花女は17歳で結婚すると以後筆はとらなかったというので、別人っぽいですが……。

それにしても、今まで意識したことがなかったですが、女性浮世絵師って意外といるんですね。応為は有名なほうですが、それでも北斎に比べると影が薄い。

たまきはただでさえ謎が多い写楽の娘という設定ですから、架空の人物です。写楽は活動時期わずか10か月で、誰なのかすらよくわかっていない。斎藤十郎兵衛説が有力らしいですが、娘がいたという記録はありません。

たまき自身の成長、そして蔦重の目的・野望も気になるところですが、オリジナルキャラクターのたまきを通した浮世絵師群像劇という感じで、これからどんどん実在の浮世絵師が出てくるのかと思うと楽しみです。

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