ゴールデンカムイ最新話254話を読みました。
それぞれの場面がちょっとずつ展開するので、どこもなかなか進みませんが、今回ちょっとびっくり。
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前回の感想はこちら↓
お前の想う未来
ゴールデンカムイ 23 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
今回の扉のアオリ文、「お前の想う未来に私が、いなくとも、私は進む。」というもの。扉に描かれているのはアシリパさんと杉元で、これはアシリパさんの言葉ですよね。「私が」の後に読点があるのが不自然な感じで気になるんですけど、これは「私が」を強調してるんでしょうかね。
杉元は今アシリパさんのために行動しているけれども、全てが片付いたら杉元はアシリパさんから離れるでしょう。アシリパさんが今まで杉元と未来について語る中で感じたことですよね。杉元は確実に離れていく。杉元の考える未来に自分はいないけど、進む。
「私は進む」。それでもアイヌの未来のために進むってことでしょうけども、どうなんだろう。進む、進まない。進まないとしたら杉元がこうあってほしいという「山で狩りをしてヒンナヒンナ」生活になるのかな。
なんかこう、自分の想いとは裏腹に勝手に自分を手助けして、終わったらさいならしようという男に対して思う言葉としては、「だから、前に進む」という感情でもしっくりくるように思いますね。
だってアシリパさんが山で幸せにヒンナヒンナして暮らしましたとさ、となったら、杉元は安心して自分のことなんて忘れちゃわない?という感情もあるのでは。
もちろん進むのは杉元云々は関係ないアシリパさんの意志ですけども、なんか忘れないようにしてやろうという気持ちもあるのでは。
↓この241話のアオリ文も似たような意味をもった言葉でした。
杉元はあらゆることをアシリパさんから教えられて、ちょっと前のひとり迷子劇場さよならシマエナガちゃん回でも教えらえたとおりにサバイバルしていましたから、忘れることは当然ないでしょうけども。教えた植物の名前だって覚えている。
アシリパさんは自然の中で生きる知恵を杉元に授けました。獲った獲物を調理して食べること。それは火を使うこと。杉元にとってアシリパさんはおそらく火、あたたかさの象徴みたいなものだと思うので、今後生きる道が分かれたとしても忘れやしないでしょう。だってあの塹壕の、冷たい冷たい地獄から帰ってきた杉元を引っ張り上げてあたためたのはアシリパさんですからね。
狙撃手の思考回路はわからん
ヴァシリとの対決に入った尾形は、なるほどあの狙撃手は杉元たちの仲間なのか、と目星をつけます。誰だかは最初検討がついていなかったようですが、一瞬ヴァシリを思い浮かべ、まさかな、と思っている。とそのすぐ後、「いや…俺なら来る」と考える。
お前たち考えること一緒なのね。
一度認めた狙撃手はどっちから死ぬまで地の果てまで追いかけてやろうと?
勇作さん、兄様を止めてやって。
門倉の秘密
門倉部長と宇佐美の追いかけっこは続いています。とうとう階段で追い詰められ、壁に押し付けられながら腹に隠し持った刺青人皮を探し当てられてしまいます。
鶴見中尉は土方がどこに刺青人皮を隠すか考えていて、金持ちが資産を複数の銀行に振り分けるように、信用できる人間に少しずつ持たせているだろうと言っていたそう。
宇佐美が部長に執着するのはそういうこともあったんですね。ただどう見てもそれだけには見えないのですが。
刺青人皮を1枚奪われ、ズボンをおろされて尻をはたかれまくるカドクラ。頬を紅潮させてたたく宇佐美、もうやべえヤツですよ。目がイった変態。「アアッやめろ」と言う門倉。なんかこういう商業BLありそうですね。中年アバズレ看守を調教する年下の部下。
宇佐美は超興奮してほかにも隠し持ってないかと上衣をめくり上げるのですが、ここで驚いて我に返ります。
そこに尾形登場で戦闘に入るので今回はわからずじまいですが、そこに何があるの?多分かなりの確率で門倉刺青入ってる?
アシリパvs切り裂きジャック
工場内に火を放って土方さんたちを遠ざけ、アシリパさんに接触したジャックザリッパー。
娼婦でもないのになぜ目を付けたのかと思えば、アシリパさんがアイヌだから。
切り裂きジャックは売春婦を嫌悪していたと言われますね。被害者の共通点は売春婦であること。(全員がそうじゃないとも言われていますが)。
なんで中年の売春婦を嫌悪したのか動機はわかりませんが、このジャックザリッパーは間違った、行き過ぎた聖母信仰が根幹にあるようですね。処女懐胎した聖母マリアと同じように、アイヌにも女しかいない島で東の風におしりを当てると妊娠するという話「メナシ・ホク・コロ(シは小文字)」があって、そこが素晴らしいと思っているらしい。
キリスト教の思想による性嫌悪、性行為嫌悪というと江戸貝くんの母を思い出します。『創世記』に登場するオナンの罪。確かカトリックでしたっけ?子を成す目的でない性行為はかなりの罪だという。ジャックが売春婦を嫌悪するのもそういうカトリックの教えによるものなんですかね。
いやしかし、女性はひとりで子どもを産める、だから娼婦たちが間違ってる、というのは無茶が過ぎる。ふつう女性だけで子どもはできませんからね。
ジャックザリッパーが犯行現場でしこしこしてたのも、彼女らの罪を聖なる水で赦すためらしいですよ。
男を介さない処女懐胎が素晴らしいと言いつつ己の出すものを聖なる水と呼ぶとはどういう了見か。犯罪者の論理はわからん。お前の論理でいくと聖なる水をぶっかけられた菊田さんは罪深いのかね?
ジャックはアシリパさんに、本当にできるのかどうか、東の風にお尻を当ててみろと言う。
しかし、アシリパさんは
「私は父と母がウオラムコテ…愛し合って生まれたんだ!!」
野田サトル「ゴールデンカムイ」254話/集英社
「ウオラムコテ(ムは小文字)」は、ルビが「互いに心つける」でした。ちょっと回想が入って、アシリパさんの母の名前も初めて出ました。リラッテ。
そうはっきり言ったアシリパさんは、ストゥでジャックの膝をぶっ叩きます。そして倒れたジャックの顎を打ち返す。見事なスイング……
ストゥの乱用は決して許されないけれど、これは正しい制裁ですね。例に出してもいい正しい使い方です。
ところでね、残念なんですけどジャックさん、アシリパさんはマリアじゃなくてイエスなんですよね。まあイエスは両親が愛し合って生まれた子ではないですけども。
しかしここでまた、「愛」と「子ども」ですよ。アシリパさんは自分を、両親が愛し合って生まれた子だと断言しました。それだけ愛を注がれたのでしょう。祝福された子です。ここでどうしても、祝福されなかった子・尾形が引っ張り出される。ただ、尾形が祝福されなかったからといって、両親が愛し合っていなかったとは言い切れません。だってちゃんと描かれてませんからね。
愛が結実して生まれた子。それをアシリパさんに教えたウイルクは長谷川の妻子を殺したわけですが、自分の父が愛のある親子を踏みにじったと知ったらアシリパさんはどうするんでしょう。
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