ゴールデンカムイ19巻【ネタバレ感想】キロランケとウイルク。暗号のヒントに近づくアシリパ

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引用元:集英社(https://youngjump.jp/goldenkamuy/)
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ゴールデンカムイ最新刊19巻を読みました。

このブログで毎週本誌の感想を書き始めたのがちょうどこの19巻の途中あたりでした。再会の回ですね。半年以上前ですが、あの頃は毎週生きるか死ぬかヒヤヒヤして気が気ではなかったです。

19巻はDVD同梱版(親姫の話)のほうを買いましたが、今回はすごろくがついてきました。もったいなくて使えないよ……。その気になったらお正月にでも遊びましょうかね。

18巻の感想はこちら↓

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虎と狼の話

18巻のラストは、亜港監獄を爆破後にアムール虎が現れたところで終わりでした。181話はソフィアとアムール虎が対峙するところからスタートです。

さすがドーラみたいなソフィア、虎をも乗りこなす女……。

ユルバルスと虎

実はここで虎が登場したのは、のちにキロランケの身に起こるあれこれに向けての説明だったのだと思います。

ソフィアは一度虎に乗りますが、虎は振り落として反撃。ほかの囚人たちが銃で撃ち堕とそうとしますが、ソフィアは「やめておけ」と止めます。

なぜなら、ナーナイ族では虎は神様であり、それを殺した人間の人生は不幸になるという言い伝えがあるからだ、というのです。

ナーナイ(ナナイ)族って何よ、というと、ツングース系の民族。つまり満州、シベリアあたりの極東アジア北部の地域。少数民族ではありますが、ツングース系なら清王朝の女真族とか、そのほか高句麗、百済なんかの古代朝鮮王朝もこれにあたりますね。

話が脱線しましたが、虎です。ソフィアの説明によれば、タタール語で「ユルバルス」つまりキロランケの名は、虎を意味するのだそう。だから、このナーナイ族の言い伝えはこの後のキロランケの死にかかってくるというわけです。

ウイルクと狼

キロランケたちはようやくソフィアと合流。ソフィアはアシリパのテタラペを見てすぐにウイルクの子だと気づきます。そして何よりウイルクの目と同じなので、説明はいらなかったのでしょう。

ソフィアはさっそくアシリパにウイルクの昔話を聞かせます。

ソフィア・ウイルク・キロランケが仲間とともに秘密警察に追われていたときのこと。仲間のひとりが重傷を負いながら森を逃れていましたが、秘密警察がすぐそこまで迫ったとき、怪我をした仲間の呻き声で居場所がバレそうになり、ウイルクが彼の頸動脈を切ってとどめを刺したのです。

仲間の誰もが驚きましたが、もともと助かりそうにはなかったこと、そして声を上げていれば全員の命が脅かされていたことから、ウイルクの判断は最善の道だったのだ、と話します。ソフィア自身、悩みぬいた末に同じ結論に至ったかもしれないが、ウイルクは最短で判断し動ける人だった、という話です。

そこからさらにさかのぼって、ソフィアはウイルクの名前の由来について語ります。

曰く、幼少期のウイルクは弱った狼を見つけて毎日様子を見ていたが、遠吠えをするようになり、どこからか仲間の狼も遠吠えで返事をした。そして仲間が迎えに来た。しかし仲間はその狼を群れに戻すことなく、殺して去っていった。

つまり、その狼はもう群れの中での役割を果たせないと判断されたのだ、というのです。狼の群れにはそれぞれ役割分担があって、果たせなければ飢えなどの危険にさらされる可能性がある。狼は無駄がなく、合理的で美しい。狼の生きざまに魅入られたウイルクは、こんな生き物のようになりたいと思って屍からはぎ取った毛皮を被って走り回りました。

その様子を見ていたポーランド人の父が、ポーランド語で狼を意味する「ウイルク」と名付けたのです。

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暗号解読の鍵?ウイルクの第二の名「ホロケウ オ(シ)コニ」

そしてこの話には続きがあります。ここからはソフィアもキロランケも知らない、アシリパさんだけの記憶。

ソフィアの話を聞いたアシリパさんは、父が母について話した記憶を思い出します。

ウイルクはアシリパさんの母に、名づけの話を聞かせました。すると、アシリパさんの母はアイヌの新たな名をつけたのだといいます。それが「ホロケウ オ(シ)コニ」(※シは小文字)、狼に追いつくという意味でした。

ウイルクは幼いアシリパに、この話を絶対に忘れてはいけない、そして誰にも教えてはならない秘密だ、と念を押しました。

アシリパさんはこの記憶とともに、杉元と一緒に囚人の暗号を書きうつしたときのことを思い出します。暗号の漢字の読み方「迂」そのほか、「弐」「歯」の字がクローズアップされます。

アシリパさんがここで何に気づいたのかはわかりませんが、確かに暗号解読のためのヒントに気づいたのでしょう。

ですが、「…あッ!!」と声をもらしたアシリパさんの反応を、尾形だけは見逃しませんでした。

アシリパから聞き出そうとする尾形

雪が強くなってくるなか、流木を探すという名目で尾形はアシリパさんを連れ出します。もう聞く気マンマン。

単刀直入に「とても重要なことを思い出したな?」とズバリ聞いてしまうのが尾形の残念なところですね……

このあとのエピソードについては過去の記事を貼っておきます。

特に188話の「生きる」は本誌リアタイのとき生きた心地がしなかったですねー。

185話から190話までの加筆部分については後で触れますが、改めて単行本で読み返していて気になったことがあるのです。

杉元の銃、どこいった?

184話、白石はおしっこをしようと思っていたところで流氷が傾き、杉元が助けに来て九死に一生を得るのですが、ここで白石を引っ張り上げた杉元の背中にはちゃんと銃があります

(余談ですが、この白石間一髪のシーン、以前やった骨の占いの結果が反映されたのだと思うのですが、ここで杉元に助けられたことは何を意味するのでしょう?ちょっとわからない。杉元の不死身パワーは他人にも作用するのかしら……)

ですがね、185話「再開」になると、もう背中には銃がないのですよ。

なんで?

ミス?

なんでこんなことを気にするかというと、この後尾形がアシリパさんの誤射した矢で右目を失った後、流氷が割れた拍子に銃が海に落ちる描写がありますよね?

あれを私は尾形がスナイパーとして終わったという暗示だととらえたのですが、これがもし杉元の銃だったら意味ないじゃん、と思って見返していたのです。

で、今度は186話を見ると杉元は銃を持ってる。187話、ホパラタをしてるシーン、持ってない(これはホパラタに邪魔だったから下に置いてる可能性もある)。187話ラスト、尾形の後ろですげー顔をしてるシーン、持ってない。

やっぱりここからずっと持ってないので、落ちた三八は尾形のものだったということでいいのでしょうね??

ちなみに、この再会のあとのオシッコシーン、2ページも加筆されて白石のオシッコ大増量。ましましです……。

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ソフィアの加筆

さて、ここからは気になった加筆箇所について。細かい加筆については触れませんが、大幅に数ページ加筆されたシーンで特に多かったのがソフィアに関する場面です。189話と190話。

杉元はアシリパさんと再会したあと、尾形を背負ってあの網走監獄での一部始終を語って聞かせます。尾形が自分とウイルクを撃ったこと、そしてウイルクを撃つ合図をしたのはキロランケだと。

そこでアシリパさんは、ソフィアと合流してすぐに彼女がキロランケをぶん殴ったことを思い出します。なぜソフィアは怒っていたのか。もしかしたら、キロランケは手紙ですべてを話したのではないか、と考えたのです。ソフィアならすべて知っているかもしれない。

そして、あちこちで騒動が起こるなか一人で行動していたのがソフィアです。キロランケたちを探し歩きながら、流氷が割れたことで双眼鏡で様子をうかがう場面が加筆されています。

実は本誌掲載時では、この後キロランケが死んで一行が去るまでの間、一切登場していませんでした。加筆によって、この間ソフィアがどこにいて何を感じていたのかがわかるようになりました。

189話のラスト、ソフィアは遠くでキロランケが鯉登少尉に馬乗りになっている場面を目撃し、どこかへ走ります。そして飛んで190話の途中、ここはすでに月島軍曹、谷垣、鯉登少尉の三人がかりでキロランケを追い詰めた後で、月島の命令でとどめを刺すのをアシリパさんが制止したところです。

流氷の塊の陰から様子を眺めるソフィアに、この場面はどう映ったのでしょうか。彼女は悔しそうに歯噛みし(今出て行っても助けられないことは明白)、氷の塊で流氷を叩き割って隙間をつくり、海に顔を突っ込んで咆哮しているかのように見えます。悔しくて叫びたいけど、そのまま叫んだら聞こえてしまう。だから水に顔を突っ込んで叫んだのですね……。しんどい。

ここでソフィアの加筆シーンは終わりです。

ソフィアはユルバルスがウイルクを殺したことをめちゃくちゃ怒ってた(多分)けど、どこまで説明されていたんでしょうね。彼に憤ってはいたけど仲間です。この場で大勢によってたかって攻撃され(ソフィアから見たら多分そう見える、けど実際は大勢で攻撃しないと抑え込めないのがキロランケ……)ているのに、自分は見ていることしかできず見殺しにしてしまった。

ユルバルスが第七師団の連中に殺されてしまったことへの憤り+それを見殺しにした自分のままならなさ、があの咆哮だったのかなあ。

次巻はキロランケとの別れと新キャラ続々

キロランケは最後、樺太の旅を振り返って亡くなります。アシリパさんを連れてきて、子どもたちと接して、スチェンカとかバーニャとか無駄なこともした。

この「結構無駄なことしたな」っていうのは実にウイルクと対照的ですよね。ウイルクは無駄なく最短で答えにたどり着くのが美点だったかもしれないけど、キロランケはこの無駄なことも慈しめるところが良さじゃないですか……。

振り返ると19巻は尾形のアレとか壮絶なことがあったけど、ウイルクとキロランケの話でしたね。

さて、20巻はキロランケとの別れで一区切り。鶴見陣営の新キャラが登場します。巻末予告を見るといろいろ盛沢山ですねー。もっとゆっくり進んだ気がしたけど……。毎週ヒヤヒヤしてるから余計そう感じるのでしょうか。

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